2024年度新聞広告賞の一次審査員をさせていただきました。
以下はその講評です。
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伝える相手に思いを馳せる。
企業や作り手にとって、新聞広告はいまなお特別感がある。しかし、だからこその落とし穴もある。肩に力が入り、良いことや大きなことを言おうとするほど、相手がどう感じるかという当たり前の視点がつい抜けてしまう。その点、第一興商の通信カラオケ「DAM」は素晴らしいと思った。 30周年の節目に、自社の思いを声高に語るのでなく紙面でも読者を楽しませてみせた。映画「しん次元クレヨンしんちゃん」。子どもの気分が沈みがちな夏休み明けという掲載タイミングと同様に、一見些細な言葉選びにも、受け手への配慮を感じる。牛派と鰻派の掛け合いが面白い鹿屋市の文章も、沖縄セルラー電話による生き物たちの圧巻のイラストも、紙面を見た人の感情を想像しながら作られているように思う。伝える相手に思いを馳せることが大切。なんとも凡庸なことを筆者は書いている。だが、どんな天才にも不可能なことを一瞬でやってのける人工知能が、子供でも簡単にできること(たとえば思いやりだ)を習得できないという不思議もある。人間ならではの仕事を模索しなければいけない時代のヒントが、このあたりにある気もしている。
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